両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 そう言って私に手を差し伸べてくれた。
「はい」とうなずき彼の手を取る。
 彼の綺麗な横顔を眺めながら、胸の中に生まれた不安は少しずつ大きくなっていった。


 数日後。
 私が仕事を終えマンションに帰ると、クリーニングに出していた翔真さんのスーツが戻って来ていた。
「部屋までお持ちしましょうか?」というコンシェルジュの男性の申し出を断って、クリーニングされた服を受け取りエレベーターに乗る。
 しわにならないうちに翔真さんのスーツをクローゼットにしまおう。そう思い、玄関を開けてまっすぐ彼の寝室に向かった。
 大きなベッドが置かれた落ち着いた寝室。奥には広々としたウォーキングクローゼットがあり、たくさんのスーツや私服が収納されている。
 洋服だけでなくベルトや時計なんかも整然と並んでいて、まるでセレクトショップのようだ。翔真さんの合理的で几帳面な性格が伝わってくる。
 ちなみに私の寝室にも同じくらい大きなクローゼットがある。
 引っ越してきたばかりのころは、洋服の収納のためにこの広さは無駄なのではと思っていたけれど、翔真さんと結婚してから私の服やドレスはどんどん増えていき、この大きさのクローゼットは必要だったんだなと納得した。
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