両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 クリーニングから返って来たスーツをクローゼットにかける。
 翔真さんのスーツはすべてフルオーダーだ。シャツも長身の彼に合わせて仕立てられたもので、一緒に身に着けるネクタイや革靴ももちろん高級品。
 スーツを着た翔真さんは本当に上品でかっこいい。仕事中の彼の姿を思い浮かべるだけで頬が熱くなる。
 そんなことを考えながら踵を返したとき、足が棚にぶつかってしまった。その衝撃で小さな箱が床に落ちる。
 ことん、と軽い音をたてて転がったのは手のひらサイズの四角い箱だった。箱を拾い上げた私は、そこに書かれた文字を見て息をのむ。
 それは避妊具のパッケージだった。
 どうしてこんなものが、翔真さんのクローゼットに?
 しかも箱は開封されていた。私たちは子作りをしていて、避妊具なんて必要ないはずなのに。
 まさか、翔真さんが浮気をしている……?
 そんな疑問がわき上がり、頭が真っ白になる。
 翔真さんが浮気をするなんてありえない。そう信じたいのに、浮気のほかにここに避妊具がある理由が思い浮かばなかった。
 不倫は倫理的にも社会的にも許されない行為だ。真面目で誠実な翔真さんが、そんなことをするとは思えない。
 ということは、浮気じゃなくて本気で好きな人がいるんじゃ……。
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