両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 そう思うと怖くて、胸の奥にわき上がる疑念から目をそらすことしかできなかった。
「すみません。まだ夕食の準備ができていなくて……」
 リビングに移動しながら謝ると「いいよ、そんなこと」と翔真さんが優しく笑いソファに座った。
「おいで」と隣に座るようにうながされ、手に持っていたスマホをテーブルの上に置き、緊張しながら腰を下ろす。
「明日から出張することになった。今日はその準備もあって早めに帰って来たんだ」
「どこに行かれるんですか?」
「北海道に」
「明日から、札幌でモーターショーが開かれる予定ですもんね」
 モーターショーと呼ばれる自動車展示会は、東京をはじめ大阪や福岡など各地で開催されている。
 もちろん吉永自動車もブースを出していて、発売予定の新車や次世代のコンセプトカーを出展する予定だ。
「あちらの主催者からぜひステージに登壇してほしいと誘いがあったんだ」
 日本の自動車業界のプリンスと注目を集める翔真さんがイベントに参加すれば、話題になるのは間違いない。
 主催者がぜひにとお願いするのもうなずける。
「予定が合わなくて断っていたんだけど、急遽スケジュールが空いて行くことになった」
「そうだったんですね」
「ついでに北海道の工場を視察してくるから、三日間ほど行ってくるよ」
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