両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
翔真さんはご両親に対して常に敬語で話し、どこか距離を置いているように見えた。悠希に対しても遠慮と劣等感を持っているように見えた。
翔真さんのあの言動が、自分は婚外子だという罪悪感から来ているものなら納得できる。
「誰からも必要とされず捨てられた子どものくせに、御曹司としてちやほやされて副社長にまでなり上がってるなんて、図々しいと思わないか」
「図々しいだなんて、そんなこと……」
「あんただって騙された被害者だろ? 吉永自動車の後継者と結婚して玉の輿に乗れたと思ったら、実際は愛人の子どもだったなんて。がっかりするよなぁ?」
飯島さんは声を上げて笑う。
彼の出生にどんな事情があったとしても、翔真さんは翔真さんだ。彼を思う気持ちが揺らいだりしない……。
そう言い返したかったけれど、喉のあたりがぎゅっと締まって声がでなかった。
私が手のひらを握りしめたとき、応接室のドアがノックされた。
はっとして顔を上げる。入って来たのは作業着姿の年配の男性だった。
「親父」
飯島さんのつぶやきで彼が飯島社長だと察する。私は慌てて立ち上がり頭を下げた。
「お世話になっております。吉永自動車広報の藤沢と申します」
「こちらこそお世話になっております。社長の飯島です」
翔真さんのあの言動が、自分は婚外子だという罪悪感から来ているものなら納得できる。
「誰からも必要とされず捨てられた子どものくせに、御曹司としてちやほやされて副社長にまでなり上がってるなんて、図々しいと思わないか」
「図々しいだなんて、そんなこと……」
「あんただって騙された被害者だろ? 吉永自動車の後継者と結婚して玉の輿に乗れたと思ったら、実際は愛人の子どもだったなんて。がっかりするよなぁ?」
飯島さんは声を上げて笑う。
彼の出生にどんな事情があったとしても、翔真さんは翔真さんだ。彼を思う気持ちが揺らいだりしない……。
そう言い返したかったけれど、喉のあたりがぎゅっと締まって声がでなかった。
私が手のひらを握りしめたとき、応接室のドアがノックされた。
はっとして顔を上げる。入って来たのは作業着姿の年配の男性だった。
「親父」
飯島さんのつぶやきで彼が飯島社長だと察する。私は慌てて立ち上がり頭を下げた。
「お世話になっております。吉永自動車広報の藤沢と申します」
「こちらこそお世話になっております。社長の飯島です」