両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
まさかという気持ちとやっぱりという気持ちが同時にわき上がる。
『黙っていてごめん』
「いいんです。そんなこと」
私にとっては、翔真さんの出生にどんな事情があっても関係ない。そんなことで彼への想いが揺らいだりしない。だけど……。
「ただ、ひとつ教えてください」
『なに?』
「前に悠希から、翔真さんが一度だけわがままを言ったことがあるって聞いたんです」
『わがまま?』
「私と結婚する前。翔真さんにはずっと好きだった人がいたって。その人と結婚するためにわがままを言ったって」
心のどこかで、翔真さんが『そんなの嘘だよ』と笑ってくれるのを期待していた。
『ずっと好きだった人なんていないよ。悠希が勝手に誤解しただけだよ』そんな返事を願っていた。
だけど翔真さんはゆっくりと息を吐き出しただけでなにも答えなかった。
街の雑踏がやけに大きく響いていた。必死にスマホを握り耳を澄ませたけれど、翔真さんは黙り込んだままだった。その沈黙で悠希の言葉が嘘ではないんだと悟る。
「本当なんですか……?」
震える声でたずねる。電話の向こうで彼が静かにうなずく気配がした。
息をのんだ私に、翔真さんは『彩菜には知られたくなかった』とつぶやく。
『黙っていてごめん』
「いいんです。そんなこと」
私にとっては、翔真さんの出生にどんな事情があっても関係ない。そんなことで彼への想いが揺らいだりしない。だけど……。
「ただ、ひとつ教えてください」
『なに?』
「前に悠希から、翔真さんが一度だけわがままを言ったことがあるって聞いたんです」
『わがまま?』
「私と結婚する前。翔真さんにはずっと好きだった人がいたって。その人と結婚するためにわがままを言ったって」
心のどこかで、翔真さんが『そんなの嘘だよ』と笑ってくれるのを期待していた。
『ずっと好きだった人なんていないよ。悠希が勝手に誤解しただけだよ』そんな返事を願っていた。
だけど翔真さんはゆっくりと息を吐き出しただけでなにも答えなかった。
街の雑踏がやけに大きく響いていた。必死にスマホを握り耳を澄ませたけれど、翔真さんは黙り込んだままだった。その沈黙で悠希の言葉が嘘ではないんだと悟る。
「本当なんですか……?」
震える声でたずねる。電話の向こうで彼が静かにうなずく気配がした。
息をのんだ私に、翔真さんは『彩菜には知られたくなかった』とつぶやく。