両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 翔真さんは、ほかの女性との結婚を望んでいたはずなのに。意味が分からず混乱していた。
『悠希から聞いたんだろう? ずっと想っていた女性と結婚するために、俺はわがままを言った。藤沢家が断れない理由をつけて、君との政略結婚を持ち掛けた。卑怯な手を使ってでも自分のものにしたいほど、彩菜が好きだったから』
 翔真さんの言葉を頭の中で整理する。嘘。信じられない。これは夢でも見ているんだろうか。
 あまりの衝撃にめまいを感じながら、おそるおそる問いかける。
「もしかして翔真さんがずっと想っていた女性って、私なんですか……?」
『君以外、好きになるわけないだろ』
 迷いのない返答に、胸が震えた。
 ずっと憧れで大好きだった翔真さんが、私を好きでいてくれたなんて。現実とは思えないのに、胸を打つ鼓動の速さで夢じゃないんだと実感する。
「翔真さん……」
『彩菜、今から迎えに行く』
 翔真さんが真剣な口調でそう言う。
『すぐに行くから、そこで待っていてくれ』
 しっかりと念を押し電話を切ろうとした彼に「あの」と声をかけた。
「迎えにこなくていいです」
『え……?』
 彼の声が動揺で低くなる。どうやら誤解をさせてしまったようだ。
 慌てて「ちゃんと自分で帰ります」と付け加えた。
『本当に?』
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