両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
政略結婚の裏側 翔真side
7 政略結婚の裏側 翔真side

 彩菜が自宅に帰って来るまでの時間が、永遠のように長く感じたのは、それだけ不安だったからだと思う。
 俺はマンションのエントランスでひとり、落ち着かない気持ちで外を見つめていた。
 車が通りがかるたび彩菜かと思い腰を上げ、彼女ではないと気付きため息をついてソファに座る。
 そんなことを何度も繰り返し、タクシーから降りた彩菜の姿を見た瞬間胸がつまった。
 彩菜が帰って来てくれた。それだけで脱力しそうなほど安堵している自分がいた。
 だけど、本題はこれからだ。
 俺は彼女を騙してきたことを謝罪しなければならない。どんなに批難されても憎まれてもしょうがない。俺は彩菜の気持ちを知っていて、それを踏みにじったんだから。
 ゆっくりと息を吐き出し、マンションの外に出る。
 タクシーから降りこちらに歩いてきた彩菜が、俺の姿に気付き足を止めた。
「翔真さん……。ずっとエントランスにいたんですか?」
 彼女からたずねられ、素直にうなずいた。
「あぁ。落ち着かなくて、ここで待ってた」
「すみません、ご心配をかけて」
 悪いのはすべて俺なのに。申し訳なさそうに謝る彩菜に「いや」と首を横に振る。
「とりあえず帰ろう。ちゃんと話をしたい」
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