両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 弱いものは見捨てられ、強いものだけが生き残っていく。それは動物の世界では当然のことだ。
 誰にも必要とされないものに、生きていく権利なんてない。
 弱々しく鳴く子猫に自分を重ねながらそう思う。
 そんな俺を、彩菜はまっすぐに見つめた。
『それでも、どうにかして助けてあげたいです』
『助けてどうする? 親猫から必要ないと捨てられた命だよ』
『必要のない命なんてあるわけないです。どんなに小さくたって弱くたって、懸命に生きてるんだから』
 彩菜のまっすぐな強い視線に、胸を打たれた気がした。
 思わず言葉をなくし彼女を見つめる。
『こうやって生まれて来たんだから、どんな命にも幸せになる権利はあると思います』
 彩菜の瞳には涙が浮かんでいた。どうしても子猫を助けたい。そんな強い意志と優しさを感じた。
 そのとき俺は、自分はここにいていいんだと認めてもらえたような気がした。
 ゆっくりと息を吐き出し、『そうだね』とうなずく。
『とりあえず、動物病院に連れて行こう』
 彼女を車に乗せて、近くの動物病院へと向かった。診療時間は過ぎていたけれど、なんとかお願いして診てもらった。
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