両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「彩菜。この指輪をもう一度つけ直していい?」
 ソファの前のテーブルに置かれた指輪を見ながらたずねる。彼女がうなずいてくれたのを確認してから、左手の薬指に結婚指輪をはめた。
 彩菜の指に俺の妻だという証がはまったのを確認してゆっくりと息を吐き出す。
「それから、ブレスレットも」
 指輪と一緒に置かれていたブレスレットを彼女の手首につけ直す。
「そういえば、前に先輩の萌絵さんに聞いたんですけど、これすごく高価なものなんですよね」
 彩菜は手首にはまったブレスレットを見下ろしながらつぶやいた。
「限定品で、たまたま見つけて買えるようなものじゃないって言ってました」
 彼女の言葉に「そうだったかな」と曖昧に誤魔化す。
 たしかにこれはたまたま見つけたわけじゃなく、彩菜にプレゼントしたいと思って事前に用意していたものだ。
 一見シンプルに見えて、実は上質で希少性の高い物。彼女の服やアクセサリーはそんなもので揃えている。
 彩菜にはそういう上品なものが似合うという理由もあるし、ほかの男への牽制の意味もある。上質なものを身に着けていれば、悪い虫が寄ってきづらいから。
 そんなこと、わざわざ彼女には言わないけれど。
「そのほかに手島さんはなにか言ってた?」
< 176 / 191 >

この作品をシェア

pagetop