両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 唇が触れる寸前でまたぎゅっと目をつぶった彩菜を「こら」と甘い声で叱った。
「目を閉じないで、ちゃんと見ていて。自分が今から誰にキスされるか」
「うう……っ」
 彩菜は顔を真っ赤にしながらおずおずと視線を上げこちらを見た。羞恥で潤んだ瞳がかわいくて理性を忘れそうになる。
 見つめ合ったまま、顔をかたむけ唇を合わせる。
 触れては離れるキスを数度繰り返し、舌を差し入れると彩菜が驚いて首をすくめた。
「逃げちゃだめだよ」
 微笑みながらあごをすくいあげキスを深くする。
「ん……っ、翔真さん……」
 必死に俺のキスを受け止める彩菜のけなげさが愛おしくて、大切にしたいと思う優しい気持ちと、誰にも触れられない場所に閉じ込めて自分だけのものにしたいという身勝手な欲望がわき上がる。
 こちらを見つめる瞳がとろんととろけていくのがわかった。そんな彼女と目を合わせながら、じっくりと味わうようなキスをする。
「ふ……、んん……っ」
 もれる吐息がどんどん甘くなっていく。彩菜の頬は上気し目には涙がたまっていた。
 かわいいなと小さくつぶやく。もっとかわいがって甘やかして気持ちよくしてあげたい。羞恥心も理性も手放し、ぐずぐずになるくらい。
 そんなことを考えながらゆっくりと唇を離す。
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