両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 顔を見るたびに触れたくなり、できるなら毎日でも抱きたいと思った。
 だけど、もし彩菜が妊娠したら、彼女が俺に抱かれる理由はなくなる。もう二度と触れられなくなるかもしれない。そんなこと耐えられないと思った。
 少しでも多く彼女に触れたくて、前回彼女を抱いたときに避妊具を使ってしまった。
 彩菜は子どもを欲しがっていたのに、彼女への独占欲が抑えきれず黙って避妊したなんて。本当に卑怯だと思う。
 理由を説明し謝罪すると、彩菜は「そうだったんですね」と息を吐き出した。
「私はてっきり翔真さんが浮気をしているんだと……」
「彩菜以外の女性にまったく興味がないのに、浮気をするわけがないだろ」
 きっぱりと言い捨てた俺を、彩菜は少し不安そうな顔で見る。
「でも、翔真さんは子どもが欲しくないってことですか?」
「まさか。妊娠して出産したあともずっと夫婦でいられるなら、いくらでもほしいよ」
 俺の言葉を聞いた彩菜は、ほっとしたように胸をなでおろした。
「よかった。子どもをほしがっているのは私だけかと思って不安になりました」
「俺の身勝手な行動のせいで不安にさせてごめん」
 謝りながら彩菜を抱き寄せる。彩菜は俺の首筋に頬をつけ「ううん」と首を横に振った。
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