両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 それはたしかに……とつぶやく。昨日の翔真さんは今までの紳士的で余裕のある姿が嘘のように情熱的に私を求めた。
 思い出すだけで体の奥が熱くなる。
「でも、私はうれしかったです。本当に私を好きでいてくれたんだなって伝わって来たので」
 私を抱く腕に力が込められた。翔真さんが私を見つめ幸せそうに微笑む。その表情を見て胸のあたりが温かくなった。
「彩菜、好きだよ」
 ささやきながら額にキスをされ、うれしくてくすぐったくて笑みがもれる。
「私も大好きです」
 今までは夫婦なのに片想いだと思い込んできた私たち。こうやって想いが通じて好きだと伝えられることが、本当に幸せだと感じる。
 ベッドの中で抱き合いじゃれ合っていると、翔真さんのスマホが震えた。翔真さんはベッドサイドに置いてあったスマホを持ち上げ画面を見る。
「設楽さんからだ」という言葉を聞いた私は一気に青ざめた。
「すみません。昨日は大変でしたよね……!」
 翔真さんは出張で札幌に行っていたのに、私が離婚すると言い出したせいで仕事を放りだし帰って来てくれた。
 たくさんの人に迷惑をかけてしまったに違いない。なんてことをしてしまったんだろう……。
 自己嫌悪に陥り頭を抱えていると、翔真さんが「大丈夫だよ」と笑った。
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