両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「モーターショーのイベントはほかの人に任せるわけにはいかなかったけど、それ以外の工場視察は設楽さんで十分対応できる仕事だったから」
「でも、設楽さんはロボットという異名を持つほど合理的で有能な秘書さんですよ。仕事よりも私情を優先するなんて、きっと怒ってるに違いないです」
「そうでもないよ。設楽さんは怒るどころか、俺の話を聞いてすぐに飛行機のチケットを取って送り出してくれた」
「本当に?」
 意外すぎて目を丸くする。
「あぁ。設楽さんにはいつも『副社長は本当に奥様を溺愛してますよね』ってあきれられていたし」
「いつも余裕があって穏やかな翔真さんのどこを見てそんなことを」
「たぶん、気付いていないのは彩菜だけだったと思うよ」
 翔真さんの言葉に首をかしげた。そんな私を見て彼は小さく笑う。
「ずっとこうしていたいけど、そろそろ起きて朝ご飯を食べようか」
 そう言われ時計を見る。すでに朝というよりもお昼に近い時間だった。
 うなずきベッドから出てリビングへ向かう。
 そういえば、と思い出しバッグの中に入れておいた自分のスマホの電源を入れた私は驚いて目を丸くした。
 私の家族や悠希から、たくさんの連絡が来ていた。
「翔真さん。スマホがすごいことになってます」
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