両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 彩りも栄養バランスもばっちりの今日の献立だけど、使った野菜は実家の家政婦さんが送ってきてくれたものだから、かかった費用はお肉とスパイス代くらい。
 おいしい料理を作りながらも、節約もできたことに満足して笑みを浮かべる。
 私は小さなころから実家の大きなキッチンで、家政婦さんに料理を教えてもらうのが好きだった。
 そのおかげで一般的な家庭料理ならなんでも作れるようになった。中でも採れたての野菜を使った料理が得意だ。
 家政婦さんは実家の広い敷地の中で家庭菜園をしていて、夏から秋に山のように新鮮な野菜が採れる。
 私も夏休みになると朝早くから水やりをして、野菜のお世話をしていたっけ。
 毎日採れる野菜を新鮮なうちに調理して、常備菜にしたり冷凍保存したり工夫しておいしく食べる。無駄なく使いきったときの達成感が大好きだった。
 そんな私を家政婦さんはとてもかわいがってくれていて、結婚した今でも定期的に野菜を届けてくれる。
 実家での生活を懐かしく思っていると、玄関の鍵が開く音がした。翔真さんが帰って来たんだと気付き、廊下に出て彼を出迎える。
「翔真さん、おかえりなさい。お疲れ様です」
 玄関に入って来た彼は涼し気な視線を私に向けた。翔真さんのお顔は完璧に整っているから、目元をわずかに緩ませるだけでうっとりするほど美しい。
「ただいま、彩菜」
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