両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 そう言ってリビングを出て行く。
 私は髪に残る長い指の感触にドキドキしながらそのうしろ姿を見送った。そして、ドアが閉まった瞬間大きく息を吐き出した。
 あぁぁぁぁっ。今日も翔真さんはかっこよすぎる……!
 なんとか叫ばずに我慢した自分を褒めながら、肩を上下させて深呼吸をする。
 それにしても、と思いながら自分の左腕を見下ろした。
 そこにはもらったばかりのブレスレットが輝いている。上品だけどシンプルで、職場にもつけていける素敵なデザインだった。
 翔真さんはどうしていつも私に高価なプレゼントをしてくれるんだろう。彼は私がお金を使わないことに不満を持っているみたいだ。
 首をひねって「そうか」と気付く。
「翔真さんは、私に副社長の妻としてふさわしい、セレブな生活をしてほしいと思っているのかもしれない」
 ひとりでそうつぶやき納得する。そして私は頭を抱えた。
 困った。両親を反面教師にして育った私は贅沢に興味がないし、むしろ倹約をして無駄をはぶくことによろこびを感じるタイプだ。
 それなのに、翔真さんが自分の妻には贅沢な生活をしてほしいとのぞんでいるなら、庶民的な感覚を持つ私は妻失格なのでは……。
 青ざめていると、部屋着に着替えた翔真さんがリビングに入って来た。
 さらりとした白いシャツに黒いパンツ。シンプルな格好だからこそ、彼のスタイルの良さが際立っていた。
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