両片想い政略結婚～執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない～

「彩菜が通いたいならいいけど、俺のためなら必要ない。毎日こんなにおいしい料理を作ってくれているだろ」
「でも、この先お仕事関係の人を家に招く機会もあるかもしれないですし」
　翔真さんのご実家でも、ときおりゲストを招いてホームパーティーを開いていた。将来吉永自動車のトップに立つ翔真さんも、これからそういう場面がいくつもあるだろう。
　そのときに妻として翔真さんをサポートするのが、政略結婚をした私のつとめだ。そう主張すると、彼はわずかに表情を曇らせた。
「仕事を家庭に持ち込んだり彩菜に接待をさせるようなことはしないから、気にしなくていい」
「それは、至らない私に大切なゲストをおもてなしさせるのは不安だからですか……？」
　おずおずとたずねると、翔真さんは視線を上げ私を見る。
「いや、そうじゃない。俺が不安に思っているとしたら、反対の意味でだよ」
「反対？」
　意味がわからず首をかしげる。そんな私に向かって翔真さんはにっこりと微笑んだ。
「彩菜は彩菜らしく笑っていてくれれば、それだけで十分だから」
　優しい言葉なのに、少しだけ突き放されたような気がした。
　私と結婚したときも翔真さんは私を気遣うようにそう言ってくれたっけ……。と心の中でつぶやく。
「そうだ、彩菜。明日の予定は？」
　翔真さんにたずねられ、「え？」と首をかしげる。
「そろそろだろ」