両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 私たちは恋愛結婚ではなく政略結婚で、翔真さんは吉永自動車にメリットがあるから私を結婚相手に選んだ。
 必要なのは藤沢家の名前と人脈だけで、私自身にはなにも期待していないと言われたように感じてしまった。

 その後、大きな失敗もなく無事披露宴を終えた私たちは、ふたりの新居に移動した。
 今までは私は実家で暮らしていたけれど、今日からは翔真さんの妻としてここで暮らす。
 翔真さんが用意してくれたマンションは、窓から都心の夜景が見下ろせた。実家は一軒家だったから、自宅からこんな景色が見られるなんて映画でも見ている気分だ。
 落ち着いたインテリアで揃えられたリビングの大きなソファに座り、私は深呼吸を繰り返す。
 私が先に入浴をすませ今は翔真さんがお風呂に入っているので、リビングにいるのは私ひとり。
 今夜はいわゆる初夜。私たちは夫婦なんだから、もちろんそういうことをするよね……。
 幼いころからずっと翔真さんに片想いをし続けてきた私は、恋愛経験がいっさいなかった。異性と手を繋いだことも、キスをしたこともない。
 初めての相手が大好きな翔真さんだなんてうれしくてしかたない。だけど、期待と同時に緊張と不安も大きくなる。
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