両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 これから翔真さんに抱かれるんだ……。そう思うと彼が男だと言うことをいやでも意識してしまう。たくましい肩とか厚い胸板とか引き締まった腰とか、私とはまったく違う体。
 私が見とれていると、翔真さんが「どうかした?」と首をかしげた。
 しまった。こんなふうに凝視していたら、変に思われる。
「な、なんでもないです」
 慌てて目を逸らしたけれど、声が思い切り裏返った。動揺しているのがバレバレだ。
 翔真さんは向かい側のソファに腰を下ろした。そして私をじっと見つめる。
 そうやって見られると、余計に緊張するんですけど……!
 ときめきが暴走しそうになり、心の中で悲鳴を上げる。
 私たちの寝室は別々に用意されていた。多忙な翔真さんが、私の睡眠の邪魔をしないようにと気遣ってくれたらしい。
 でも今日は初夜だから、翔真さんの寝室で一緒に寝るんだよね。
 夫婦の営みというものは、ベッドに行こうと誘われて始まるんだろうか。それとも、とくに宣言もなくキスをしたり触れたりして徐々に深まっていくものだったり?
 恋愛経験がいっさいない私は、これからどんな流れになるか予想できずにひたすら緊張していた。
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