両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「ええと、おやすみなさい」
 なんとかうなずき挨拶をして、ひとり部屋に入った。ぱたんとうしろ手にドアを閉めたけれど、私は思い切り困惑していた。
 私たちは夫婦になって、今日は新婚初夜で、絶対に彼と一夜を共にするんだと思っていたのに……。
 まさか、ハグもキスもなく別々に寝ることになるなんて、予想外だった。

 たしかにその日は朝から挙式の支度をして、慣れない白無垢やドレスを着て、大規模な披露宴を終え、その後もたくさんの関係者たちに挨拶をして……。私はとても疲れていた。
 現に自室のベッドに入った私は、すぐに熟睡してしまったし。
 きっと翔真さんは疲れた顔をした私に気を使って別々に寝ようと言ってくれたんだ。
 私たちは夫婦になったんだから、初夜に抱き合わなかったとしてもこれからいくらでもそういう機会はあるはず……。
 そう思っていた私だけれど、翔真さんはいくら待っても私を抱こうとはしなかった。
 結婚してから三カ月。翔真さんと私の関係は清いままだ。抱き合うどころか、キスもハグもしていない。
 別に仲が悪いというわけじゃない。むしろ申し訳なくなるくらい、翔真さんは私に気を使い優しく紳士的に接してくれている。
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