両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 彼女の言葉に「はい」とうなずく。
「どちらも夫の母が若いころに使っていた宝石を、私のために作り直してくれたんです」
 今日私が付けているのは、小さなサファイアがついたピアスとネックレス。どちらも深い青色の石の美しさを最大限に生かすために、シンプルで上品なデザインに仕立ててある。
『サファイアは彩菜ちゃんの誕生石だから』とお義母様がプレゼントしてくれたけど、受け取った後でこの石が希少価値の高いカシミール産のブルーサファイアだと知り震えあがったっけ。
「お義母様からのプレゼントなんて素敵ですね!」
「ありがとうございます。でも自分で選んだわけではないので、取材のしがいがないですよね」
「いえ。二世代に渡って愛用しているサファイアなんて、読者がよろこぶ素敵なお話です」
 目を輝かせる園田さんの隣で、男性カメラマンの佐野さんがちょっと残念そうな顔をした。
「そっか。藤沢さんはご結婚されているんですね」
「はい。職場では旧姓のまま働いているんですが、半年ほど前に」
「独身だったら連絡先を聞こうと思ったのになぁ」
 左手に結婚指輪をしているから、私が既婚者なのは最初からわかっていたはずなのに。彼のリップサービスに「お上手ですね」とくすくす笑う。
 佐野さんはカメラマンをしているだけあって女性の扱いに慣れているんだろう。撮影中もこうやって、冗談を交えながら私の緊張をほぐしてくれた。
< 5 / 191 >

この作品をシェア

pagetop