両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 整った顔にはいつもの穏やかさはなく、嫉妬と欲望が浮かんでいた。獲物を前にした獣のような、危険で官能的な視線。
 こんなふうに感情をむき出しにした彼を見たのは初めてだった。
 翔真さんが魅力的すぎて、頬が熱くなり頭がくらくらしてくる。
「待って、もう、本当に無理です……っ!」
 こんなにかっこいい翔真さんに抱かれるなんて無理! 感情が大爆発して『大好き』と泣き出してしまいそうだ。そんなことになったら、絶対に引かれる。
 私が必死に訴えると、翔真さんが動きを止めた。
 動揺しすぎて涙で濡れた私の目元を優しく拭い、ゆっくりとため息をつく。
「そんなに俺に抱かれるのはいや?」
「い、いやではないです! ただ、緊張と恥ずかしさで卒倒しそうで……!」
「卒倒されるのは困るな。この状況で意識を飛ばされたら、本当に歯止めが利かなくなりそうだから」
 彼は小さくそう言い、ベッドサイドにあったリモコンに触れ照明を落としてくれた。
 薄暗くなったおかげで、翔真さんの輪郭が闇に溶け曖昧になる。これなら少しは理性を保っていられそうだ。
「これでいい?」と問われ、ほっとしながらうなずく。
 翔真さんのたくましい体が覆いかぶさって来て、ぎゅっときつく抱きしめられた。
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