両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
月に一度の約束

3 月に一度の約束

 来年創業五十年を迎える吉永自動車は、今までのグループ会社のあゆみを記録するために記念誌を作っている最中だった。
 広報の私はその記念誌制作チームのひとりとして、取引先などへの取材や原稿執筆の依頼を担当している。
 会社でパソコンに向かいメールの確認をしていると、左手首にはめたブレスレットが視界に入った。昨日翔真さんがくれた、細いチェーンのブレスレット。
 そのブレスレットが目に入るたび、翔真さんから『明日は一緒に寝よう』と誘われていたことを思い出す。
 今日は翔真さんに抱かれるんだ。そう思うだけで鼓動が速くなる。
 普段は紳士的でさわやかな翔真さんだけど、ベッドの中の彼はぞくっとするほど男らしくて色っぽい。
 そのギャップが本当にかっこよくて、毎回ドキドキしてしまう。
 私の旦那様は魅力的すぎて反則では……。とこぶしを握り締めていると、隣に座る萌絵さんに声をかけられた。
「彩菜ちゃん、それ素敵ね」
 彼女の視線は私の左手首のブレスレットに向けられていた。
「副社長からのプレゼント?」
 慌てて頭の中の煩悩を振り払い「はい」とうなずく。
「外出先でたまたま見つけて、素敵だったからって買ってきてくれたんです」
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