両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 おおざっぱで豪快な悠希とは違い、翔真さんは思慮深く繊細だ。二日続けてカレーを作ったって文句を言ったりしないだろうけど、心の中では不満を抱くかもしれない。
「カレー以外のものにしない?」
 私がそう言うと、悠希が拗ねた顔をした。
「えぇー」とおおげさに肩を落とす。
「アメリカだとスパイスたっぷりの本格的なカレーしかないから、普通の家庭のカレーが恋しいんだよなぁ。あの懐かしい味を食べたかったのになぁ……」
 しょんぼりした表情で私を見る。
 ずるい。そうやって拗ねられると私が悪者みたいだ。捨てられた子犬のような顔をする悠希としばらく見つめ合い、根負けしてため息をついた。
「もう。わかった。作ってあげる」
 私が仕方なく折れた途端、悠希が笑顔になった。
「やった」
 うれしそうな笑顔につられて私も笑ってしまう。
 悠希は昔からこんなふうに強引で身勝手だけど、人懐っこくて憎めないところがある。自然体で人の懐に入り込んでみんなを味方につけてしまう、いわゆる人たらしだ。
「なんか買い物してく?」
「お野菜はあるから、カレーのルーとお肉を買いたいかな」
「了解。スーパー寄ってくか」
 そう言ってふたりでスーパーに入る。ガラガラとカートを押す悠希は楽しそうに店内を見回す。
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