両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 いつもは独身時代から使っている自分のカードで払っているけど、翔真さんから『渡したカードを使ってほしい』と言われていたっけ。
「どうした?」
 動きを止めた私の手元を、悠希がのぞきこむ。
「あ、どっちのカードを使おうかなと思って」
「黒いほうは兄貴から渡されたやつ?」
「うん。翔真さんの支払になるのが申し訳なくて、まだ一回も使ってなかったんだけど……」
「素直に使っとけよ。そのほうが兄貴もよろこぶから」
「そうかな」
 悠希に背中を押され、初めて翔真さんのカードを使った。
 荷物が大量になったので、タクシーをつかまえ自宅に帰る。荷物をキッチンまで運んだ悠希は、興味深そうに室内を見回した。
「いいマンションだな。ここ、兄貴とふたりで選んだの?」
「ううん。翔真さんが用意してくれたの」
 結婚を前に住む場所の希望を聞かれ、『特にないです』と答えると翔真さんが部屋を探してくれた。交通の便が良く、セキュリティーも万全の高級マンション。
 ちなみにインテリアはコーディネーターさんに好きなテイストを伝えて揃えてもらった。
 キッチンで料理を始めた私を、悠希がカウンターに頬杖を付きながら眺める。
「そうだ。日本にいる間ここに泊まっていい?」
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