両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「しかも吉永自動車には御曹司がふたりいるんですよ! 今回話題になった副社長もですけど、今はアメリカにいる専務の弟さんもかなりかっこよくて、東京モーターショーでふたりが揃った姿が『吉永自動車のプリンス』って話題になったのを知らないんですか?」
「プリンスって、ミーハーすぎないか」
 鼻息荒く力説する園田さんと、顔をしかめる佐野さん。
 そんなふたりの様子を眺めていると「藤沢さん、副社長も専務も本当にかっこいいですよね?」と同意を求められた。
 私は一瞬言葉に詰まり、曖昧な笑みを浮かべながらうなずく。
「そうですね……。副社長や専務のおかげで話題になっていろいろなメディアから取材の依頼をいただいているので、広報としてはありがたいです」
「ちなみに藤沢さんは副社長と専務、どちらがタイプですか?」
 園田さんは目を輝かせながら私にたずねる。
「ええと」
 ここはなんと答えるべきだろう……。私が返答に困っていると、背後で自動ドアが開く音がした。
 反射的に入口のほうに視線を向ける。ショールームに入って来た男性を見て、心臓が大きく跳ねた。
 オーダーメイドのスーツが見事に似合う引き締まった体つきの長身の男性。彼はゆったりとした足取りでこちらに歩いてくる。
< 7 / 191 >

この作品をシェア

pagetop