両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 このままじゃ、翔真さん大好きと叫んでしまいそうだ。でも、そんなことを言ったら絶対に引かれる。なんとか気持ちを抑えなきゃ。
「でも、あの、それは子どもがほしいからで……っ!」
 パニックになりながら言うと、翔真さんの動きが止まった。
 どうしたんだろうと思い視線を上げる。
 翔真さんは片手で額を覆っていて表情が見えなかった。彼は視線を落としたまま気持ちを整えるようにゆっくりと息を吐き出す。
「あの、翔真さん……?」
 戸惑いながら名前を呼ぶ。彼がこちらを見たときには、いつもの冷静で穏やかな表情に戻っていた。
「悪い。勘違いをしてうぬぼれるところだった」
「勘違い?」
「彩菜が俺に抱かれる理由は、子どもを作るためだもんな」
 ひとりごとのようにそうつぶやき目を伏せる。彼の表情からは感情が読み取れなかった。
「彩菜。ベッドに行こうか」
 彼は私の手を取り寝室に移動する。
 翔真さんは私がお願いする前に、部屋の照明を暗くしてくれた。お互いの輪郭がぼんやりとわかる程度の薄暗い寝室で私たちは抱き合う。
 その日の翔真さんは意地悪で、私はベッドの中でとことん焦らされた。
 指と舌で何度も絶頂まで高められ、頭が真っ白になる。早く翔真さんとひとつになりたくて体の奥が切なくうずく。
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