両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 快感に翻弄されるうちに羞恥を忘れた私は、「お願い、もう……」と涙声でお願いする。
 だけど翔真さんは「まだだめだよ」と静かに微笑んだ。
 これ以上気持ちよくなったら、頭がおかしくなってしまう。そう思いながらシーツを掴み、与えられる快感に甘い声をもらす。
「――彩菜」
 どこに触れられても気持ちがよくて、耳元で名前を呼ばれるだけで背筋が大きく跳ねた。
 そんな私を見て、翔真さんが「本当にけなげでかわいいね」と低い声でささやく。
「名前を呼ばれるだけでこんなに感じるのは、俺の声があいつに似てるから?」
 快楽のせいで頭が朦朧としていて、その問いかけの意味は理解できなかった。
「翔真さん……?」
 戸惑いながら名前を呼ぶと、翔真さんが小さく笑う気配がした。そして、暗闇の中なにかを取り出す音が聞こえた気がした。
「わかっているのにそれでも君を離したくないなんて、俺はどこまで卑怯なんだろうね」
 そう言って、翔真さんがようやく私の中に入って来てくれた。さんざん焦らされ敏感になった体は、待ちわびた熱い感触に一気に上り詰め意識を手放した。

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