両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 ご両親からの小言を、悠希がものすごい仏頂面で聞いている。突然呼び出されたことに、不満たっぷりという表情だ。
 さっきから、悠希から無言で睨まれている気がする。
『どうして帰国していることを言ったんだ』と文句を言いたいんだろう。
 落ち着かなくて冷や汗をかいていると、私の両親がおおらかに笑った。
「まぁまぁ。悠希くんだって、仕事は真面目にやってるんだからいいじゃないか。普段アメリカでがんばっているぶん、こっちで羽を伸ばしたかったんだよな?」
「それに、この自由奔放な性格が悠希くんの魅力だわ」
 フォローの言葉をかけられた悠希は、さっきまでの仏頂面が嘘のように人懐っこい表情を浮かべる。
「おじさんとおばさんは本当に優しいなぁ。俺、藤沢家の子どもに生まれたかった」
 父と母は簡単に悠希に懐柔され「じゃあ、うちの婿養子になるかい?」なんて言い出した。こうやってすぐに人の懐に入り込んでしまう悠希は、本当に人たらしの悪い男だと思う。
 あきれる私の隣で、翔真さんが静かに口を開いた。
「悠希。自由に振舞うのはいいけど、お前は吉永自動車の専務で後継者なんだ。社名に泥を塗るようなまねはするなよ」
 釘をさされた悠希は、顔をしかめ翔真さんを見る。
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