魔法の手~上司の彼には大きな秘密がありました!身も心も癒されたい~
「相原主任、少し宜しいですか?」

「おぉ。どうした?」

相原主任は彼の圧力に負けて携帯を貸した諜報人で私達の縁を繋いでくれた人。

「フルール・ド・リスの件で御相談が」

私は主任と一緒にパーテーションで囲まれた打ち合わせ用の簡易スペースに座って先日依頼のあった件を話した。

「あのフルール・ド・リスがね〜」

相原主任の態度からすると寝耳に水の案件らしい。
主任と私は入社以来共に頑張って来た旧知の仲で信頼も信用もしてる。

「チーフはどうしたい?俺は一度会って話を聞いてみたいとは思うけど」

元々下がった目尻を一段と下げてテーブルの上で手を組んだ。

「私も同意見です。うちにとってもフルール・ド・リスにとっても良い話かと。では、あちらにアポをとってみます」

藍沢チーフからメールで貰った東館とフルール・ド・リスとの契約内容を確認して主任は課長に話を通しに行った。

「私は…っと」

アポを取る為にデスクに戻り藍沢チーフにフルール・ド・リスの蘇芳の担当を紹介して貰う。

「契約内容も良いものですね。この金額でブランド名をとなると安い方かも」

送られて来た契約内容とそこに至った経緯をマウスを動かし確認する。

『ふふっ。藤堂課長の手腕じゃないかしら。』

(彼の手腕?)

『東館のフルール・ド・リスの誘致も彼のお陰。西館新規参入の件も東館店舗の成功例があったからだと思うわ』

あんな有名ブランドと取引を簡単に結べると思えない。

“何かがある”と直感で思えた。

「チーフありがとうございました」

カチャリと受話器を置いてパソコンの画面をみて小さく息を吸った。

国立の有名大学出身と藤乃屋の孫。
33歳。
寝起きは良いのに眠いと少し不機嫌。

私はあまり彼を知らない。

「まずはアポ取り」

どんな理由にせよこれからが大事。
再度、受話器を持ち藍沢チーフから教えて貰った担当に連絡を取った。
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