魔法の手~上司の彼には大きな秘密がありました!身も心も癒されたい~
大通りに出て手を上げてもタクシーは止まらない。
百貨店が繁忙期なら周りだって忙しいのは当たり前で師走と言う言葉が頷ける。
「早く追い出され過ぎだよね〜」
「まだ22時だよ。うちで飲む?」
うちに誘う私に桜子は嬉しそうに腕にまとわりついて来た。
「じゃあ久しぶりに泊めてね」
蘇芳と自宅が近いのは私。
昔はよくうちに泊まって二日酔いで出勤してた。
「桜子の着替えまだあるよ」
「助かる〜。さすが円生」
よろけながら歩いて何とか電車に乗り込むと二駅先がうちや藤乃屋の住む地域になる。
「近いって良いな〜」
「家賃が大変だけどね」
ははっと笑いあって藤乃屋近くで足を止めた。
藤乃屋の前には黒の高級外車が停まり運転手らしき人が後部座席のドアを開けた。
「ねぇ、あれ」
「うん、真宮さん」
今日の契約で会ったばかりだから見間違うわけがない。
昼間の印象とは違いカッチリ纏めてた髪はおろしツイードのジャケットに細身のジーパン姿だがオーラはある。
(あっ、大先生)
ずっと通いずっと見て来た彼の父親で私の担当医。
「おぉ、よく来たね〜」
大先生の優しい声に真宮さんが頭を下げ後部座席から4~5歳くらいの男の子を抱き下ろした。
「じいじ」
可愛い声が聞こえ大先生は笑顔で子供を抱きかかえ3人は藤乃屋の隣にある先生の自宅へ入っていった。
「あの家って藤堂課長の…」
「うん、実家」
「そうだよね…えっと…早く家行こう」
自宅入口から目を離せない私の手を桜子は引っ張り500m先のマンションまで歩く。
その通りには彼のマンションもあるけど私達は素通りをして見ないようにした。
「あれは偶然、真宮さんが藤乃屋の患者さんで、仲良しなおじいちゃん先生を子供がじいじって呼んだだけじゃない?」
「彼女、独身じゃ無かった?」
彼との噂を聞いた時に少し調べたことがアダとなり自分の首を絞めてる。
「そうなの?あぁ、そうね…じゃあ真宮さんの甥っ子で藤堂課長は…いや違う」
桜子は間違えたと言わんばかりにチューハイを缶ごと一気に飲み干した。
確かに今は独身でも実は結婚してたとか?
元カノだとしか聞かなかったけど躊躇した指先が気になる。
「課長に連絡して見たら?推測で判断するって良くないと思う」
桜子の意見に頷いて連絡する為に携帯を持った。
「メールより電話!ほらっ呼び出してる」
私の携帯を素早く奪った桜子はボタンを押して私に返した。
何度目かのコール音が止み「『もしもし』とくぐもった声が聞こえた。
「今、大丈夫?」
冷静を心がけて落ち着いた雰囲気を漂わせる。
『あぁ…まあ大丈夫だけど…どうした?』
「今日無事にフルール・ド・リスと契約したの」
彼が少し息を飲んだのが分かった。
そして『お疲れ様』と話して受話器部分を押さえたのが分かった。
「もしもし?忙しいんじゃないの」
わざとカマをかける様な言い方をして胸が痛い。
『いや、まあちょっと。また連絡す…パパどこぉ〜。あっ待て!円生、あの』
ーーブチッ
私は電話を切った。
いや、切ってやった。
「円生、どうだった?」
冷蔵庫から3本目のチューハイを持ってのんびり歩いて来た桜子に、
「パパは忙しそうだったわ」
そう言うと桜子はガタンと缶をフローリングにぶちまけた。
百貨店が繁忙期なら周りだって忙しいのは当たり前で師走と言う言葉が頷ける。
「早く追い出され過ぎだよね〜」
「まだ22時だよ。うちで飲む?」
うちに誘う私に桜子は嬉しそうに腕にまとわりついて来た。
「じゃあ久しぶりに泊めてね」
蘇芳と自宅が近いのは私。
昔はよくうちに泊まって二日酔いで出勤してた。
「桜子の着替えまだあるよ」
「助かる〜。さすが円生」
よろけながら歩いて何とか電車に乗り込むと二駅先がうちや藤乃屋の住む地域になる。
「近いって良いな〜」
「家賃が大変だけどね」
ははっと笑いあって藤乃屋近くで足を止めた。
藤乃屋の前には黒の高級外車が停まり運転手らしき人が後部座席のドアを開けた。
「ねぇ、あれ」
「うん、真宮さん」
今日の契約で会ったばかりだから見間違うわけがない。
昼間の印象とは違いカッチリ纏めてた髪はおろしツイードのジャケットに細身のジーパン姿だがオーラはある。
(あっ、大先生)
ずっと通いずっと見て来た彼の父親で私の担当医。
「おぉ、よく来たね〜」
大先生の優しい声に真宮さんが頭を下げ後部座席から4~5歳くらいの男の子を抱き下ろした。
「じいじ」
可愛い声が聞こえ大先生は笑顔で子供を抱きかかえ3人は藤乃屋の隣にある先生の自宅へ入っていった。
「あの家って藤堂課長の…」
「うん、実家」
「そうだよね…えっと…早く家行こう」
自宅入口から目を離せない私の手を桜子は引っ張り500m先のマンションまで歩く。
その通りには彼のマンションもあるけど私達は素通りをして見ないようにした。
「あれは偶然、真宮さんが藤乃屋の患者さんで、仲良しなおじいちゃん先生を子供がじいじって呼んだだけじゃない?」
「彼女、独身じゃ無かった?」
彼との噂を聞いた時に少し調べたことがアダとなり自分の首を絞めてる。
「そうなの?あぁ、そうね…じゃあ真宮さんの甥っ子で藤堂課長は…いや違う」
桜子は間違えたと言わんばかりにチューハイを缶ごと一気に飲み干した。
確かに今は独身でも実は結婚してたとか?
元カノだとしか聞かなかったけど躊躇した指先が気になる。
「課長に連絡して見たら?推測で判断するって良くないと思う」
桜子の意見に頷いて連絡する為に携帯を持った。
「メールより電話!ほらっ呼び出してる」
私の携帯を素早く奪った桜子はボタンを押して私に返した。
何度目かのコール音が止み「『もしもし』とくぐもった声が聞こえた。
「今、大丈夫?」
冷静を心がけて落ち着いた雰囲気を漂わせる。
『あぁ…まあ大丈夫だけど…どうした?』
「今日無事にフルール・ド・リスと契約したの」
彼が少し息を飲んだのが分かった。
そして『お疲れ様』と話して受話器部分を押さえたのが分かった。
「もしもし?忙しいんじゃないの」
わざとカマをかける様な言い方をして胸が痛い。
『いや、まあちょっと。また連絡す…パパどこぉ〜。あっ待て!円生、あの』
ーーブチッ
私は電話を切った。
いや、切ってやった。
「円生、どうだった?」
冷蔵庫から3本目のチューハイを持ってのんびり歩いて来た桜子に、
「パパは忙しそうだったわ」
そう言うと桜子はガタンと缶をフローリングにぶちまけた。