魔法の手~上司の彼には大きな秘密がありました!身も心も癒されたい~
ポン…ポン…ポン

ずっと続いてるメールとスタンプの音にイラッとしてくる。

「チーフ…課長からの〜」

西館でも1~2位を争う老舗の京菓子屋さんの箱を私のデスクに鈴ちゃんはおずおずと差し出した。

「私は要らないから皆んなでどうぞ」

(冷静沈着!)

すっかり忘れるとこだった。
取り敢えず眉間に寄りかけたシワを笑顔に!

「毎日、差し入れなんて変です」

彼からの差し入れはもう1週間も続いてる。

昨日のアンデルセンの林檎タルトは私のお気に入りで絶品だった。

「ケンカとか…」
「してない!!」

「したな」とボソッと呟いて鈴ちゃんはお菓子を皆んなに配りに行った。

(ケンカ?)

そんな生易しい話ではない。

『円生、結婚しよう』

これが一週間前の出張先から掛けて来た電話。

「結婚しません」

またもブチッと電話を切りその後は一切連絡を受け付けてない。

『理由は今はまだ話せない』

そう言われてからの“結婚”?!
普通に有り得ないでしょ?

「チーフ…顔怖いですよ〜」

お菓子の配膳を終えた鈴ちゃんはおでこを指さした。

「はははっ、ごめん。ちょっと仕事立て込んじゃって」

繁忙期に入り忙しいのは事実。
だから彼の事を考えてる暇は無いのに頭から離れない。

「少し休憩してくる。鈴ちゃんは早く帰るんだよ」

「チーフもたまには早く帰って下さいね」

鈴ちゃんの優しさが身に染みる。

「ありがとう」と言って席を立った。

一旦何か飲んで頭の中をリフレッシュしなくちゃ仕事も進まない。

小さいテーブルが3つある共有スペースの端に座り紙コップを片手にドカッと座った。

「疲れた〜」

高めのヒールを履いたままではリラックス出来ず足を組み片方だけヒールから足を解放した。

(両方脱ぎたいけど我慢…)

いつもは飲まないカフェラテは甘くて疲れた身体にはちょうど良い。

「西館チーフもお疲れだね」

「一ノ瀬マネージャー」

席を立とうとヒールを履こうとしたけど「気にしないで」と私の隣に座った。

「藍沢チーフも忙しいでしょうね」
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