魔法の手～上司の彼には大きな秘密がありました！身も心も癒されたい～

一ノ瀬マネージャーは四館を統括する人で基本的に東館に常在しながら全館フォローをしてる。

「彼女も無理をするからね」

(優しい笑顔…)

このイケメンも底が見えない。

蘇芳全館でも有名な“鉄壁の貴公子”

蘇芳イケメン御三家の一人。
その中でも別格の優しさとそれに見合う笑顔は“鉄壁”と言われる由縁。

桜子並みにお人好しで偉ぶらないのは好感が持てる。

(どこぞのイケメンとは大違い！)

「仕事の悩み…では無さそうだね」

穏やかな声のトーンは嫌いじゃない。
彼の発する声が蘇芳中の女性達を虜にしてると言う噂もあながちウソでは無さそう。

「恋愛って難しいです」

苦笑いを浮かべて彼の勘の鋭さと女性を虜にする声に本音をポロリ。

「まあね。でも難しいと悩むのも恋愛の醍醐味じゃないかな」

マネージャーも苦笑いを浮かべた。

(醍醐味と割り切れたらどんなに良いか…)

いざ両思いになると面倒事が増えて片思いの時が楽しかった気がしてくる。

「マネージャーは秘密…って有りますか？」

ズバッと聞いてみる。
不思議とこの人は話しやすい雰囲気を持ってる。

「秘密？あるよ。俺も普通の人間だからね」

ははっと笑って、

「恋愛の話で言えば…好きな人に嫌われたくないから言えないって事もあるね。歳を重ねれば特に臆病になる」

凄く分かる。
学生時代より行動範囲も自由も増えたのに発する言葉や思いは狭まった気がする。

「解決するには…凄い顔してこっちに来た彼に話す方が良い。ちょっとごめんね？」

私に謝ると私の前に跪いてヒールを履かせて立ち上がりニコッと鉄壁の笑顔を向けた。

「一ノ瀬マネージャー!!」

ズカズカ歩いて来て私とマネージャーの間に割り込んでくる。

「藤堂課長からかうと本当に面白いね」

フッと笑って「色々無理しないように」と私に言い残し去って行った。

本当に優しい人だ。
近くにあんな人が居る藍沢チーフが少し羨ましい。

「浮気かよ」
「自分でしょ」

立ち上がった私の腕を掴んで「消毒」とワケが分からない事を口走りまずは事務所に連れ戻された。