魔法の手~上司の彼には大きな秘密がありました!身も心も癒されたい~
「花凜チーフ、また使用日と違う領収書がメール届いてまーす」

「花凜くん、あれ、あれどこだっけ?」

「花凜、この商談どうなってる?」


休み明けは朝から私は人気者。
ちなみに花凜(かりん)は名字で名前は円生(まるみ)
普通に読めないらしく大体名字で呼ばれる事が多い。

「領収書は営業に問い合わせ中です」

「あれは部長の右棚の3段目の左から4冊目の資料本に書いてます」

「課長、商談は先方の遠藤様から明後日にお願いしたいとの事で連絡ございました」

はぁ…疲れた。
一気に聞かれた内容を答えて来年に控えた西館リニューアルの新規店舗一覧に目を通した。

私の勤める蘇芳百貨店は全国や海外にも系列店がある総合百貨店。
由緒ある蘇芳は創業400年と江戸時代から代々続き高級層だけではなくカジュアル中心の一般層向けも取り扱い景気が思わしくない業界の中でも緩くだが右肩上がりを続けてる。

「円生〜。飲み行こうぜ」

同期で外商営業部の金石尚(かねいしなお)が声を掛けてきた。

こいつ…またか。
尚が飲みに誘う時は大抵彼女と喧嘩した時で愚痴を散々聞かされる

「行きたいけど今日は無理。帰れそうに無いもん」

「まじか、誕生日の祝いでもしてやろうと思ったのにな」

あぁ〜そっちもあったか。
すっかり忘れてた…

「チーフだから大変なのも分かるけどあんまり無理すんなよ」

昨年西館のチーフになって人事方面や経営戦略と私の仕事は多岐にわたる。
所属は総務になるけど女性の多い職場についてまわる問題なども私の担当になる。

「ありがとう。また今度誘ってよ」

手を振り見送って東館の藍沢チーフ宛にメールをして背伸びをした。

時計は20時を過ぎてるけど周りにはまだ働いてる人達はいる。

百貨店の営業上早番と遅番があり上の役職になるとフレックスタイム制を導入さている。
上半期の決算を終えたのも束の間で10月になると年末の催し物の準備で忙しくなる。

「そろそろ帰ろうかな」

あっという間に時間は21時を過ぎていて急いで帰り支度を始めた。
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