願いをつないで、あの日の僕らに会いに行く
「だって高校生活の半分以上が、コロナで終わっちゃったんだもんなぁ」
言い訳するようにつぶやいた。
私たちは不遇な学生時代を過ごした、いわゆる〝コロナ世代〟というやつだ。
コロナに直面したのは高校一年生の終わりからだけど、コロナパンデミックが起こらなければ、もっと充実した高校生活を送れていたことは間違いないと思う。
コロナのせいで諦めたこと、諦めさせられたことがたくさんあった。
智恵理が言っていた、高槻くんが自殺した理由かもしれないあの事件だって、コロナさえなければ起こらなかったことなのだから。
「もしも、ひとつだけ願い事を叶えられるとしたら……」
この世界を、コロナの脅威から救ってほしい。
だけど、今さらそんなことを願ったって、高槻くんは生き返らないんだ。
バスケットボールを持つ手に力を込めた私は、顔を上げると真っすぐにゴールリングを見つめた。
そして、当時、ずっと目で追っていた高槻くんを思い出しながら、顔の前でボールを構えた。