願いをつないで、あの日の僕らに会いに行く
【今年は各地で花火大会が開催される予定で、会場も多くの人で賑わうことが予想されます】
二〇二三年、八月九日水曜日。
私、滝瀬 六花は電車に揺られながら、スマホでニュースを読んでいた。
耳に押し込んだイヤホンからは、夏らしいアップテンポな曲が流れ始める。
とてもじゃないけど今の気分には合わない曲だ。
イヤホンを外した私はスマホも一緒に閉じてカバンにしまうと、懐かしい景色が流れる窓の外を眺めた。
真っすぐな水平線と、水面に反射する陽の光がとてもきれい。
地元に帰ってくるのは大学入学を機に都内でひとり暮らしをするようになってから初めてなので、約一年半ぶりだった。
通っている都内の大学から実家までは二時間かからないくらいの距離だけど、実家には九十歳になる祖母がいるから帰りづらかった。
《次は海凪高校前駅、次は海凪高校前駅。降り口は左側です》
聞き慣れた駅名のアナウンスが流れた。
席を立った私は電車を降りると、海凪高校前駅の改札を出た。
そして、家を出てからここまでずっとつけっぱなしだったマスクを外した。