鏡と夜桜と前世の恋
「ですが水揚げは他のお客様が… 」
咲夜は用意して来た有り金、全てを楼主に投げ渡す。
「これで足りなければ政条家に文を出せば金は出る」
" 政条家 "
咲夜の家柄を知った楼主は " あの政条家のご子息!?" と、びっくり… 咲夜に対してコロッと態度を変え、何度も深く頭を下げ始める。
「あ、あの政条家の… 」
顔の表情が緩みっぱなしでにやにやする楼主…
店側からすれば、大きな財力を持つ政条家の息子である咲夜はかなりの上客になる。
「咲夜様も色々大変でしたね… 濡れ着を着せられ罪人にされた身ながらも、自ら無罪放免を勝ち取り全て明かしたやり手のご次男だと新しい噂も聞いております」
「まだ金がいるなら幾らでも用意する。八重桜の水揚げは俺がする!!!」
さく…
それに無罪放免って、おすずさん達に濡れ衣を着せられた罪の疑いが晴れたって事?良かった… 本当に。
" 愛されていますね "
付き人の男は咲夜と楼主のやり取りを聞いて、冷やかすかのようににやにや笑いながら雪美に微笑んだ。