鏡と夜桜と前世の恋


ーー その日の夜。



雪美が在籍している遊郭とはまた別の店に、咲夜は1人の客人として来ていた。







政条家と言えばほとんどの人が知る家柄… その息子だと言うのだから、我が我がと大人数の花魁達が咲夜目当てで気に入られようと出入りする。



「ゆきーーー」



「誰だお前、お前なんかよりゆきの方が可愛いぞ!」



「ゆーーーきーーー 」



咲夜は出入りする花魁達に一切関心を持たず、無礼など考えるどころかずっと、ゆきゆき…



「俺はゆきと客として以外は… 普通に抱いたこと無いんだよ、あの猿ーーー」



側から見ると今の咲夜の行動は完全に酔っ払い… 暫くすると、この店に陸… いや、申又が現れたと聞き咲夜の顔付きが変わった。



咲夜は、大勢いる花魁の中から位が1番高そうな1人の花魁を指名すれば、その花魁と2人で奥の部屋に入って行った。




咲夜が指名した花魁の正体は… 陸と名乗り、申又が通うこの店にうまく潜入した " ゆりね " だった。



「咲夜様、本当に宜しいんですか?」



「… 頼む」



奥の部屋に入った咲夜とゆりねは襖を閉め部屋の中の様子を見えない様にすれば、咲夜の唇に紅を引き遊郭で働く女性同様、咲夜の姿を綺麗に着飾らせて行く…


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