鏡と夜桜と前世の恋
「貴方まで来るの… 」
ニヤリと笑った陸は " 雪美… 雪美… ”と名前を呼びながら雪美の着物の袖に手を伸ばす。
陸の手を咄嗟に振り払った雪美は怯えた表情で「さく!!!」と咲夜を叫び、反対側の小道を走って逃げる。
追いかけて来る陸と陽菜… 必死で逃げていると誰かとぶつかり雪美は尻もちをついた。
「痛… 「雪美?」
「あ、蓮稀お兄ちゃん!助けて、また出た… 」
雪美がぶつかった相手は蓮稀だった。何か思いついたのか雪美はそそくさと蓮稀の後ろに隠れる。
陸は雪美に好意があるのか、いつも雪美に何かとちょっかいを出し " 雪美にちょっかい出すな " と、咲夜にこてんぱんにやられている男。
陸の特徴は、とにかく女好きで、モテたい願望が強い。お気に入りの女には貢ぎ癖もあり、咲夜を心底妬んでいるクセに何でも咲夜の真似さえすれば女にモテると思い込んでいる…
カワウソそして馬の世話が大好きな、病気がちで、足も少し不自由な男。
「懲りねえなお前も… 咲夜にあれだけやられてんのに」
陸に対して溜め息を吐く蓮稀。
陸は " 政条の息子… ああ、兄の方か… " と、嫌な顔でニヤニヤ笑い、陽菜は陽菜で雪美を睨みつけている。
「蓮稀お兄ちゃん… 怖い… 」
雪美は蓮稀の後ろに隠れ、陽菜を見れば勝ち誇ったように笑うそれを見た陽菜は雪美に対して更にイライラを増やす。
「よー、陸。咲夜にあれだけ " 雪美に近づいたら " ってこてんぱんにやられてんのに… まだやってんのか」
雪美の体を自分の後ろに隠す蓮稀… 蓮稀に対しては強く言えないのか言い返さず黙り込む陸と陽菜。
「蓮稀お兄ちゃん後はよっろしくー♡」
陸と陽菜に対し雪美は " べーっ " と、舌を出して小道を通り咲夜のいる政条家に…
お嬢様とは思えないほど着物を捲りあげ、るんるん気分で走り出した。