鏡と夜桜と前世の恋
「何故そんなことを言うの?」
「お前が… 蓮稀を見ていた事は知っていた。だけど俺は小さな頃からお前が好きで好きで堪らなくて、父上に頼んで縁談を結んで貰った。今でも遅くない… 」
そんな昔の事… 咲夜はずっと気にしてくれていたの。縁談を破棄したいと言われるんじゃないかと心配した雪美は内心ホッとする。
「私は咲夜と生きていくと決めたの。蓮稀お兄ちゃんの事は小さな頃の好きよ?今、私はもう大人。お慕いしてるのは咲夜… 貴方なのに」
雪美は背を向ける咲夜の前に回り込み、両手で頬を挟んで自分の方を向けさせる。
「ゆ、ゆき…」
咲夜はどんな思いで、どんな気持ちで私にこの話をしてくれたんだろう。
ずっと気にさせてたなんて。私は咲夜しか見てない、私の心の中は咲夜だけなのに … 涙を流しながら微笑む雪美。
「ずっと言えなかった。ゆきにさよならされるのが怖くて… 」
雪美の話しを聞いて安心し " 良かった… " と、力一杯最愛の人を抱きしめる咲夜。
ねえ、肩が震えてる…
雪美は咲夜が頭にさしてくれた彼岸花を手に取り、咲夜に手渡す。
" 私も思うのは貴方1人だけ "
雪美は愛おしい彼に笑みを浮かべた。
「来年もななつはんに彼岸花を見に来よう」
咲夜は手渡された彼岸花を受け取り、そのまま立ち上がると雪美を抱き上げ、その場でくるくる回る…
雪美は咲夜の行動に驚くも抱き着き、楽しそうにきゃっきゃと声を上げて笑いながら幸せなひと時を過ごした。