鏡と夜桜と前世の恋
さくのバカ…
家に着いた雪美は、帰るなりそのまま部屋に閉じ篭り自分の布団に顔を埋める。
「雪美、咲夜さんがいらしたわよ?」
「…会いたくないと伝えて」
母上の呼び掛けに返事するも時既に遅し、咲夜はもう部屋の前に居て…
「会いたくないとは何故だ」
部屋のドアが開き、立っている咲夜の姿を見た雪美は慌てて飛び起きる。
「何を怒っている?」
「だって… 咲夜、あの子と川下りに行くのでしょ?」
「… え、何故俺が?」
雪美の話しにキョトンとする咲夜 … それを見た雪美も同じくキョトン。
あれ…?
雪美は遊亜に言われた事を、咲夜に説明すれば " 川下りはゆきか1人でしか行かぬ!!" と、びっくり。
咲夜の言葉に安心して涙目になった雪美は嬉しさのあまり警戒心なく、ぎゅーっと抱き着いた。
良かった、あの子の話しは嘘だった… そうだよね、咲夜が他の女の子と行く訳がないもの…
「ねえ、さく、私だけ…?」
不安になれば、行かないと信じていても好きな人の断言する言葉が欲しくなるもの… 雪美は、咲夜に抱きついたままもう一度問いかける。
密着し、身長差から自然と上目遣いの雪美が堪らなく可愛くて… やばい、思わず体が反応してしまう。
「行かない」
「さく… 」
" ゆき… ここがゆきの家でなければ俺は犬になっていたぞ… " と、言いながら背中を優しく撫でる咲夜。
犬?
頭にハテナを浮かべる雪美を見た咲夜はくすっと笑い " こういう事だ "と、相手の体を押し倒す。
固まる雪美の目を真っ直ぐ見つめた咲夜は、押さえ付けた手を離しぽんぽんと頭を撫でる。
「か、帰る… また明日迎えに来る。川下りに行こう」
顔を赤くした咲夜は
雪美の返事を聞かず部屋から出て行き…
雪美は雪美で、気崩れた着物を直しながら暫く立ち上がれず、ドキドキして腰が抜けた感覚になっていた。