鏡と夜桜と前世の恋
理不尽な欲
蓮稀お兄ちゃんは、私にとっても大切な人。咲夜との幸せを心から願ってくれたように私も蓮稀お兄ちゃんの幸せをずっと願って来たのに…
遠い過去の記憶を思い出しながら、長いジメジメとした人気のない廊下を歩く雪美は… 咲夜と蓮稀を探す。
二人はどこに行っちゃったの?
歩く廊下は薄暗く、怖がりな雪美は終始ビクビク… 暫く廊下を歩いていると、聞き覚えのある声が先の廊下から聞こえて立ち止まる。
「こちらには隠し撮りがある。その話しを出せば、バカだから写真欲しさに来るだろう、その時が…」
この声は陽菜と陸の父上 (藤川)?
誰と話してるんだろう… 隠し撮りって何のこと?声のする場所に近付いた雪美は、バレないように身を潜めて藤川の話しに聞く耳を立てる。
「最高ではないか!奴を主役にした官能小説を書き、世に広めてやろうか… それを見たらどんな顔をするか。心底絶望し、あの綺麗な顔を歪ませながら喜ぶ姿を切に見たいものよ」
「ねー 咲夜さんの写真は?ないの?」
藤川の話しに対して、咲夜咲夜と言うこの聞き覚えのある女の声は… 藤川の娘である陽菜。
咲夜の物となると何でも欲しい、私も欲しい、私以外駄目、物欲だけは誰にも負けない陽菜は、藤川に甘えておねだりし始める。
は?さくのって… 何を言い出すのあの子。一体なんの写真を撮るつもりなの… 動揺した雪美は思わず物音を立ててしまう。
「誰だ!!」
「誰かいるの?」
やばい、見つかっちゃう…
藤川と陽菜の声を聞いた雪美は慌ててその場から一目散に離れ、蓮稀と咲夜を気にしながら牢屋敷から出た。