鏡と夜桜と前世の恋


鍵を開け、鎖を外して貰った咲夜は、ゆりねから渡された着物に即座に着替える。



着替え終わるのを待っていたゆりねは、見張りの目を回避する為、咲夜を自身が通って来た屋根裏に誘導…







音を立てず息を潜め、四つん這いになりながら抜け、梯子を下ろして二人で無事脱獄に成功した。



牢屋敷を出た咲夜は、ゆりねと一緒に仲間がいる場所まで走ろうとするが、身体ボロボロで思うように速くは走れず…



「これではまずい… 私が時間を稼ぎ囮になります。咲夜様、この道をずっと真っ直ぐ行けば私の仲間が待っています… どうかご無事で」



「ゆり、ありがとう… 」



咲夜に対し微笑んだゆりねは、紫と黒の着物に梅の花の柄の花魁の姿に早変わり…







門前に立つ見張りの男に " 〜様に会わせて頂きたく出向きました " と擦り寄り、自身の美貌を武器に色仕掛けで時間を稼ぐ。



咲夜は足を引きずりながら、ゆりねが教えてくれた仲間の居る場所に向かった。



足が痛い…
見覚えある道が違う道に感じる。



ゆりねの気持ちを無駄にしたくない、そして雪美を今直ぐにでも迎えにいきたい一心で足の激痛に耐えながら必死で歩いた。



「咲夜様!!大丈夫ですか!?」



「咲夜様!!!」



ゆりねが指定した場所に行くと、村娘の様な女と着物を着た男が待っていた。







抜け出せたあの地獄から。これでやっとゆきを迎えに行ける、約束を果たすことが出来る。



待っててなゆき、ゆき…



「酷い… なんてことを… 」



「咲夜様、手当て致します!!」



遠くからゆりねの声も聞こえる…



良かった、上手く逃げ切れた。2人の顔を見た咲夜は安心しそのまま意識を手放した。

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