鏡と夜桜と前世の恋






探し歩き、夕暮れ前…



一軒の団子屋に居た、赤と白色の着物を着た雪美の姿を見つけた。美味しそうにみたらし団子を頬張る雪美の姿を見た咲夜は安堵から涙を堪える。



「ゆき… 」



相変わらず色気ねえな



大口を開けて大好きな団子頬張る雪美の姿にくすくす笑う咲夜は、雪美に気付かれない様に店に入り… 背中合わせに座り団子を注文する。



本当は名乗り出たい、今すぐにでもゆきの事を抱きしめたい。" 迎えに来たぞ " って声を掛けたいのに…



でも、今の俺にそんな資格があるのだろうか?



おすず達に濡れ衣を着せられたせいで俺は、向こうでは重罪を犯した… しかも脱獄犯。今俺が名乗り出たとしても… ゆきを困らせる、きっと不幸にするだけ。



咲夜の気持ちも知らず、後ろに居るなんて夢にも思わない雪美はお団子に夢中…



「ご馳走様でしたー!!」



完食後、満足そうに手を合わせた雪美は、立ち上がりそのまま団子屋から立ち去って行った。



悔しそうに唇を噛み締める咲夜…



手の届く距離に居る、やっと迎えに来られたのに、ゆきは俺の事なんてもう… 自分の臆病さに腹が立つ。



雪美が今から約束の場所に向かうとは知らずに…



「…くそっ」



本当はゆきを追いかけたいのに… もし拒絶されたらと思うと、その一歩が踏み出せなかった。



「咲夜様、少し宜しいですか?」



雪美の後ろ姿を見送った咲夜に声を掛けて来たのは… 一緒に京に来た付き人。



「何だ?ゆきの安否は確認出来た、俺はこのまま向こうに戻る、手短かに話せ」



「実は… 」

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