優しく笑う君が好きだから
 僕は即答した。
「ああ、もちろんだよ」
それから、登下校・昼休み・移動教室までも一緒に行動することになった。『これはカップルのすることじゃないか』と言いかけたがやめておくことにした。その夜早乙女さんを守るために決めたことなのに、明日からもっと早乙女さんと話せると思うと心が弾み、なかなか寝付けなかった。
 朝約束した電車の1車両目に乗っていると、2つ先の駅で早乙女さんが乗ってきた。まるで一般人とは思えない綺麗な顔立ちで、パッと見ただけで電車に乗ってきた中から早乙女さんを探し出すことができた。そして、軽く手を振り僕の存在を教える。きっと早乙女さんとは違って僕の顔は冴えないから、通勤通学ラッシュのこの電車の中から探し出すことは難しいだろうから。
「おはよう」
僕は平然を装う。
「おはよう」
君はきっと、僕とは違い本当の平然だ。
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