優しく笑う君が好きだから
エピローグ

たった五文字を求めていた

 私は4人兄弟の長女で、下には、小5の弟・小2の妹・2歳の弟がいる。私は年が離れた兄弟たちを可愛いと思っていたし、大好きだった。思春期真っ只中の娘の前でもハグが出来ちゃう仲の良すぎる両親も嫌いじゃなかった。
 けれど、少し問題があった。妹弟の子守りを頼んでくることや、手伝いを頼まれることだった。別に面倒を見ることや、手伝いをするのに問題がある訳では無い。頼んでくる時の態度だった。『“お姉ちゃんだから”当然でしょ』『“長女なんだから”しっかりしてよね。』それはお母さんの決まり文句だった。何かとそれを口にして、ため息をついた。お母さんのため息には理由があった。私が忘れっぽくて、何かと雑だからだ。言われたことはすぐに忘れてしまうし、頼まれたことをしても無意識に雑になってしまったのだ。だけど、忘れっぽいの雑なのも自覚はあったから、怒られて仕方ないと思っていた。だけど、忘れずに丁寧にした時、自分から手伝った時くらい“ありがとう”って言って欲しかった。たった5文字。だけど、その5文字を私は求めていた。いつか、いつか必ず言ってもらえると信じていた。
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