甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
内心、ゲッと舌を出していた。
「あ、すみ『申し訳ありません。本日、小柴は、どうしても出店してほしいラーメン店のご店主に、本人自らお手伝いをする約束で、出店して頂いてますので、そちらを担当致します。人手が必要でしたら、他のアルバイトスタッフを向かわせましょう』」
「あっ、それなら…仕方ないですね。いえ、うちの事務員に手伝ってもらいますので、大丈夫です。では、失礼します」
駆け足で、事務所へ向かう若林さんに、隣から悪態の声が聞こえてきた。
「最初からそうしろ。見え見えなんだよ」
「断ってくださってありがとうございます」
「…あー、お前が断るより、上司の俺が断った方が角たたないだろ。兎に角だ、あいつと2人きりになるな。絶対にだ」
そう言われても、明日までイベントがあるので、可能性がないとは言えないが、まぁ、2人きりになる必要も感じないので頷いておいた。
「よし。そろそろ、来場者が来始める頃だ。爺さんとこ、手伝って来い」
「はい、行ってきます」
しばらくして、続々と来場者が来場し始めて住宅展示会場内は予想以上の大盛況。私の手伝っていたラーメン店はもちろんのこと、どこも賑わい、行列ができるほどだった。