甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

ほとんどのお店のスープが無くなる頃、来場者も落ち着き、やっと一息がつける。

「あっという間に終わっちゃいましたね」

「そうだな。出店なんて初めてのことで、てんやわんやだったが、嬢ちゃんとそこのにいちゃんが手伝ってくれて助かったよ。ありがとな」

「いえいえ、こちらこそ、出店して頂いて有難うございました。お客様も美味しいと喜んでおられましたし、お店の場所も聞かれましたから、これから忙しくなりそうですね」

「そうなったとしても、変わらんよ。ただ、このにいちゃんがな…わしの弟子にしてくれといい出してな」

「えっ」

アルバイトスタッフの男の人が、照れくさそうに笑う。

「俺がいるんで安心してください」

「ふん。弟子にするかはわからんぞ」

そう言いながらも、嬉しそうにしているので、いい出会いがあってよかったことは喜ばしいと微笑んで見ていた。

初日に続き2日目も、来場者で賑わい、朝日ホームさんでのラーメン祭は大盛況に終わり、後片付けに、それぞれ大忙しだ。

そこで油断していた。
だいたい片付けを終えたスタッフは、先に沢内さんと一緒に打ち上げ会場に向かってもらう。

私は、最後にゴミが残っていないか確認後、台車で運べるゴミを運搬車へ運んで行こうとしていた際、「手伝うよ」と台車を奪われてしまった。
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