甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

「すみません、若林さん。お手伝いしていただいたんですね。後は、私と、小柴で運びますので、先にいるスタッフと合流してください。後ほど、打ち上げで会いましょう」

ホッとして、無意識に高山チーフの腕を掴んでいたらしく、若林さんは、鋭い目つきで私を睨んで「菜々緒、よく、考えろよ」と、捨て台詞を残していった。

「なんだ、あれ?」

「助かりました」

その場で、しゃがんでしまう。

「おい…菜々緒」

普段なら苗字で呼ぶのに、私が顔面蒼白で崩れるので驚いたのだろう。

彼も、私の目線に合わせて腰を下ろして、何も言わずに抱きしめてくれた。

好きだなぁ…
この人が好きだ。
こんなに安心する。
誰にも取られたくない。

「高山チーフ」

「なんだよ」

「私と付き合ってください」

「へっ?」

突然のことで驚きすぎて、彼らしくない間抜けな表情で、何度も瞬きを繰り返している。

「ダメですか?私、母のように嫉妬深いかも知れないし、高山チーフの全てを知っていないと気がすまない女かも知れないです。それでも、嫌じゃなかったらセフレ解消して、付き合ってほしいです」

ずっと悩んでいたのが馬鹿みたいに思えてくる。
< 108 / 145 >

この作品をシェア

pagetop