甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「わかったなら、キスしてこいよ」
相変わらずの暴君である。
顔はいい男なのは認めよう。
この男のことは嫌いだと言い続けてきたが、挑発的に右側の口角を上げる癖が癪に触る。
私が素直に言うことを聞くと見通した目で見つめてくるこの自信過剰な男が嫌い。
言われるままキスしようとしてしまう自分も嫌い。
素直に好きだと言えない自分が嫌い。
ずっと、そう思って抗ってきた。
あなたにハマって抜け出すことのできない私のように、あなたも私という沼に溺れて、執着して、私と一緒に抜け出せなくなってしまえばいい。
私は心の中で醜い呪文を唱えて、微笑む。
男の首に腕を回して挑発的に唇にキスをする。
すると、腰と後頭部を強く抱きしめられ、恋人達がするような甘い甘いキスが返ってきた。
あぁ…この男が私だけのものになればいいのにと、キスに溺れていく。
そこに愛がなくても、体で彼を繋ぎとめることができるなら、獣のように交じり合う。
高山健斗という名の沼に、私はどっぷりとハマっている。
「キスだけで足りるの?」
「お仕置きだって言ったろ」
期待でごくりと喉が鳴る。
「汗かいたから、シャワー浴びたいです」
「…前にも同じこと言ってどうなったか覚えてるか?」