甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

高山チーフの話に、目の前の男2人の表情が穏やかになる。

「私は、まだ独身ですが、入って最初に目に入った和モダンの建物が素敵だと思いました」

「そうでしょう。あの建物は、私の一押しなんですよ。四季を感じる空間を意識して内部もこだわっているんです」

「そうなんですね。どの建物も素敵でしたが、やはり、内部までこだわっているんですね。興味深いです」

そこから、長々とこだわりを聞かされる羽目になっていたが、私は興味もないので、右から左へと聞き流すのだ。

目の前にいる若林さんから感じる値踏みする視線に気づかないふりをする。

「ありがとうございました。いずれ購入を検討することがありましたら、是非、あなたのような情熱のある方にお願いしたいですね」

「あははは、検討される際は、是非、私にご連絡下さい。話はそれましたけど、今回の件、詳しい内容は、こちらでもう一度、拝見させて頂きまして、改めてお返事しましょう」

「はい、ご検討お願いいたします」

いい返事をもらえなかった私は、肩を落としていた。

ダメだったのか?

車中も無言で落ち込んでいると、コンビニに寄る為に車が停車した。

待ってろとコンビニの中へ入って戻ってきた高山さんの手には、私の好きなピーチティーと高山さんがよく飲んでいる銘柄のブラックの缶コーヒーがあった。
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